×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



春が終わり、夏が近づいてくる。
日に日に温度があがるエルヴィン団長の執務室。
通年すごく暑くなって耐えきれないわけじゃない。だけど、今日はじめっとして蒸し暑かった。汗ばむシャツに今すぐシャワーを浴びたくなって仕方がない。でも、今日はいつこの雑務が終わるか想定がつかない。今日は所謂修羅場という日だから。修羅場だからって天気までこんな風にならなくていいのに。


右手と眼球が疲れたころ、エルヴィン団長が珍しく自ら休憩をとると言った。


「ナマエも少し楽にしててくれ。私は食堂へ何か軽いものを貰いに行ってくる」

『それなら私が行ってき─────』

「休んでなさい。ナマエ昨日からまともに寝てないだろ」


団長の命令だ、そう言われてしまったら何も言い返せない。
外は暗くり、幾分か風が涼しくなった気がする。だからと言ってこの身体にまとわりつくように気持ち悪い汗が消えるわけではなかった。











「──────ナマエ、」

『エル、ヴィンさ、』

蒸し暑さが支配する中、エルヴィンさんが心配した瞳を私に向けながら私の唇を重ねる。

何度も何度も重なりあった唇は、呼吸をする為に開いたその隙間にエルヴィン団長の肉厚な熱い舌が私の咥内に入りこみ動き回る。執拗に私の舌と絡み、私も必死にエルヴィンさんと絡める。
二つの舌は絡み過ぎたのか今私はエルヴィンさんと何をしているのかと忘れそうになった。相変わらず執務室は暑い、何を思ったのか目を開けるとエルヴィンさんは相変わらず心配した瞳を私に向けている。

あ、そうだ、私は今、エルヴィンさんとキスをしているのだ。そう思い出すと絡めた舌から離れるように私はエルヴィンさんの咥内を触れたくなる。歯列を確かめるように歯茎をなぞり、エルヴィンさんの唾液を絡めとりたかった。でも、エルヴィンさんそれを許す事はしてくれず
エルヴィンさんのされるがままでいるしかなかった。口の端からどちらの物か分からないはしたない汁が垂れぐちゃぐちゃになる。
ここまで長くて執拗なキスは初めてかもしれない。でも、なぜだろうすごく気持ちがよいのだ。ここまで気持ちがよいキスをしたのは初めて、そう言い切れる位に。
私の熱とエルヴィンさんの熱で更に部屋は暑くなる。おかげて少し朦朧としてきた意識。でも、こんなにも気持ちが良いのだから、私はもっとエルヴィンさんとキスをしていたい、




「ナマエ……大丈夫か……?」

『……え、あ、』

「うなされていたが……そこまで疲れてるなら、残りは私がやっておくから自室に戻りなさい。補佐は他の者に頼んでおくから」

『は、い』


素直に返事をするしかなかった。
あれは夢だった。そう、夢である。
私はエルヴィン団長の事をエルヴィンさんなどと呼んだ事もないし、そもそもそういった関係でもない。エルヴィン団長へ恋心があるのかと聞かれたらそれは限りなくノーだ。
憧れはもちろんある。だって団長であり、冷静沈着で今までの中で出会った中でこんなに聡明な男性は居なかった。だからといってそれが恋心なのかと言われたら違う。似て異なるものだ。







ナマエが珍しくうたた寝をしていた。
そこまで疲れているとは思わなくて悪いと思った。
そうだな、私が疲れたと感じているならこの小さな女性はもっと疲れているだろう。おっと、小さいと言ったらナマエに怒られてしまうな。

持ってきたトレイを机におき、ナマエをみる。
額には汗をかいており、前髪が濡れている。今日は珍しく蒸し暑い。こんな日は何も起きずに終わるといいのだが。その前にこの面倒な雑務を終わらしたい。


『……エ、ヴィン、さん』


エルヴィンさん、と聞こえた。それは勿論ナマエの口から。

彼女にそう呼ばれるのは始めてて、心臓が少し早くなる。

「ナマエ……?」

近づきナマエの顔を覗くと、暑さのせいであるがそれはまるでそういう時のような表情であった。部下のそんな表情を彷彿としてしまった自分にため息がでそうになり、そういえば最近女を抱いていなかったと気づく。

全く生理現象ってものは嫌になる。
そして、自分も疲れている。今日はここで終わりにしようと思いナマエを起こそうと手を触れようとすると、

『や、もっと、して、』

小さな唇が動いた。
その瞬間、私はナマエの唇を塞いでいた。駄目だと思っていたのに欲望は罪深い。重ねるように触れていると、ナマエは自分から舌を絡ませてくる。ねっとりと、執拗に。
彼女は起きているんじゃないかとかそんな事が頭に浮かぶと、今まで考えた事もないようなナマエの舌遣いに負けたくないという謎の気持ちが沸き上がる。

時々ナマエから鼻から抜けるような声がどうしようもなく私を掻き立てる。
だめだ、終わりにしなくてはいけないと思いつつも止めることが出来なかった。こんなにも夢中になれる口付けをしたのはいつぶりかと思うほど。しかもそれを感情を抱いたことのない部下にだ。この面倒な雑務が終わり次第女を抱かなくてはと心に決めた。

この事は心に閉まっておくべきだと、私は決意する。


心臓と昂りが鎮まった頃私はナマエを起こす。本当に寝ていたようで、部下の見たことない一面に少し心配になるが、言えるわけもなく自室へと帰らす。


窓の向こうから月が微笑んでいる
この事を知っているのは月だけだ。



月夜の秘め事